2017年6月29日木曜日

巨額予算のネット動画は"映画"を滅ぼすか

映像の美しさでも、予算の規模でも、ネットの動画配信サービスが映画を圧倒しつつある。映画業界の危機感は強い。カンヌ映画祭は来年から出品条件に「劇場公開」を追加し、ネット動画を締め出した。「映画」と「映画館」は、今後どうなるのか。ライター/リサーチャーの松谷創一郎氏が分析する。
今年5月にフランスで開催された第70回カンヌ映画祭において、ある論争が生じた。
きっかけとなったのは、コンペティションにノミネートされた2つの作品──ポン・ジュノ監督の『Okja/オクジャ』と、ノア・バームバック監督の『ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ(原題)』だ。この2作に共通するのは、動画配信サービス・Netflix(ネットフリックス)による製作であり、ともにフランス国内で劇場公開される予定がないことだ。つまり、ネットで公開される"映画"なのである。映画祭側は劇場公開を求めたが、ネットフリックスは拒否。結果、カンヌ映画祭は、来年から出品条件としてフランス国内での劇場公開を義務づけた。
この背景には、フランス独自の文化政策がある。劇場公開された映画は、ストリーミング配信まで36カ月の期間を空けることが法律によって定められている。テレビでも、自国のコンテンツを一定割合放映しなければならない規定がある。さらには、興行収入の10%強を制作者に還元する売上税も1948年から法制化している。これらは、ハリウッド映画や日本のアニメから自国の映像文化を守るための保護政策だ。

0 comments:

コメントを投稿