2014年3月24日月曜日

学生1万9000人が使う“PCルーム”を全廃する九州大 その狙いとは?

 学生が個人のPCやタブレットで学内システムにアクセスし、いつでもどこでも自分のペースで自由に学習できるようにする――そんな先進的なICT教育に取り組む大学が現れつつある。中でも、国立総合大学としては異例の取り組みでこれを推進しているのが九州大学だ。

 同大は2013年度新入生から、学生が個人で所有しているノートPCの学内持ち込みを必須化。2017年度にはこの制度を全学生1万9000人(大学院生含む)まで広げ、学内のPCルームを全廃する計画だ。

 今後は個人PCによって"1人1台PC"の体制を確立し、オンライン教材を使った授業やWeb学習システムの活用を進めていくという。取り組みの背景と狙いについて、プロジェクトを主導している九州大の藤村直美教授(工学博士 総長特別補佐 副CIO 情報統括本部長 教材開発センター長)に聞いた。

●学内PCだけでは「とても足りない」

 現代の大学教育ではPCが欠かせない。学部を問わずレポート作成などに利用するほか、理系学部などでは専用ソフトウェアを使って課題を進めるケースもある。だが藤村教授によれば、大学が用意するPCだけでこれらの用途を全てカバーするのは難しくなっているという。

 「本学では学生用のPCを設置した講義室を12部屋ほど整備してきたが、時間割の8割ほどが授業時間で埋まっていて、学生が授業時間外に使おうと思ってもほとんど使えなかった。なぜなら学生は1万9000人ほどいるのに、学生向けPCは大学全体で約1000台しかない。これではとても足りなかった」

 オンライン教材などを使って先進的な教育を行いたくても「大学全体の予算は減らされる一方で、これ以上PC整備に使える予算を増やせる見込みもない」――こうした課題を解決すべく、同大は個人PC持ち込みに向けたプロジェクトをスタートする。

●「PCを買えない学生はどうする」――学内で反対意見も

 同大が学生の個人PC持ち込みにつながる取り組みをスタートしたのは2006年のこと。まずウイルス対策ソフトのライセンスを大学で一括購入し、学生が個人PCに実質無償でインストールできるようにした。また2007年には日本マイクロソフトと包括契約を結び、学生が最新版のWindowsとMicrosoft Officeを個人PCに無償インストールできるようにした。

 こうして同大は個人PCを学内で使いやすい環境を整備してきたものの、藤村教授はこれだけでは不十分だと感じていたという。

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