実はこの日、ソフトバンクの子会社で米携帯電話3位のスプリントが、4位のTモバイルUSを買収することでおおむね合意したと、複数の米メディアが報道したのだ。孫社長は「ノーコメント」を貫いていたが、その表情は余裕に満ちていた。
関係者の話を総合すると、スプリントは、Tモバイルを1株当たり約40ドル、総額約320億ドル(3.2兆円)で買収するという。半分を現金で、残り半分を株式で取得し、交渉が破談した際はスプリントが約10億ドル(1000億円)の違約金を支払う契約だ。
買収が結実すれば、ベライゾン・ワイヤレス、AT&Tに次ぐ、第三勢力が誕生。それまで2強2弱の4社体制だった米携帯市場は新たな局面を迎えることになり、伸び悩んでいたソフトバンクの米国事業も、一気に弾みがつく。
だが、市場は冷ややかだった。Tモバイルの株価は、報道直後に2%下落して33ドルと、40ドルに満たなかったのだ。というのも、米当局が市場の寡占化を望ましく思っておらず、経営統合の許可が下りない可能性があるからだ。
買収後も収益性に課題仮に当局が認めたとしても、ソフトバンクにとっては険しい道のりが続く。
まず、事業の収益性である。スプリントとTモバイルの契約者は、所得の低い顧客を中心としたプリペイド契約が多く、収益性の高い後払い契約が圧倒的に少ない。
また、携帯事業の競争力の源泉は、インフラ整備にあるが、清水憲人・情報通信総合研究所主任研究員は「現状では、両社が統合しても、年間の設備投資を賄うだけの利益を出す企業になれるわけではない」と指摘する。
事実、Tモバイルは今年、45億ドル前後、スプリントは80億ドルの設備投資を計画しているが、両社のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の合計は、2013年で100億ドル程度しかなく、到底賄い切れない。
今回、現金160億ドルを投じて買収したとすれば、ソフトバンクの純有利子負債は10兆円に達する見込み。それに対し、ソフトバンクのEBITDAは2.5兆円程度なので、収益力の実に4倍もの借金を背負うこととなるのだ。
純有利子負債に対するEBITDA比率は、ベライゾンが2.1倍、AT&Tが1.5倍だから、ソフトバンクは厳しい。…
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