アップルとIBMは1990年代に、米モトローラも加えた「AIM連合」で、パワーPCというマイクロプロセッサを開発。当時のパソコン市場で栄華を誇った米マイクロソフトと米インテルの「ウィンテル連合」に対抗した歴史がある。
そのときはウィンテルの牙城を崩すことはできなかったが、今回の提携が当時と違うのは、両社にとっては戦うべき絶対的強者が存在しない点だ。アップル・IBM連合が狙うモバイル端末の企業向けシステムの分野は、未開拓に近い状態なのである。
もちろんiPhoneやiPadを活用しているビジネスマンは多い。しかし、それはいわゆるBYOD(Bring Your Own Device)と呼ばれる「個人所有の機器の持ち込み」であって、必ずしも"会社公認"というわけではない。しかも、業務に用いられているとはいえ、ほとんどがiPhoneならメールとスケジュール管理くらい、iPadなら1対1の顧客プレゼンテーション程度でしか使われていないのが実態で、多くの大企業が保有する高度な企業内ITシステムとつながっている例は少ない。
今回の提携を受けて、あるIT企業関係者は「いわばBYOD時代の終わり。iPhoneやiPadが正式な企業システムとして売られるということであり、企業のIT管理部門は大歓迎だろう」と語る。
唯一残された有望分野IBMは90年代半ば以降、脱ハードウエアを標榜し、企業向けのITサービス、ソフトウエア開発や、クラウドコンピューティング、ビッグデータ解析などで大きな実績を挙げている。その顧客ベースを背景に、10万人に及ぶIBMのコンサルタントやソフト開発者が、新たな企業向けモバイルアプリの開発に取り組む。今秋から2015年にかけて100以上のアプリが提供される予定で、確かに大きな事業機会となる。
一方、アップルはiPhone、iPad市場の頭打ちに直面していた。先進国では普及が一巡し、新興国では中国勢などの格安スマートフォンの追い上げを受けている。その中で、これまで手付かずだった企業向け市場は、唯一残された有望分野だった。
この動きに対し、米グーグルを中心としたアンドロイド陣営や、マイクロソフトはどう出るか? 特に、パソコン時代では9割のシェアを持っていたマイクロソフトは、スマホ、タブレットとデジタル機器の幅が広がった現在、全デバイスを対象にしたシェアではわずか14%しかない。…
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