2014年8月20日水曜日

未来がつまらないなら自分で作ればいい~社会脳研究の第一人者が仮想現実プラットフォーム『ハコスコ』を作った理由【連載:匠たちの視点-藤井直敬】




プロフィール



株式会社SR Laboratories 代表取締役社長


藤井 直敬氏


1965年広島県生まれ。東北大学医学部卒業、同大大学院にて博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、McGovern Instituteにて研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チーム副チームリーダー。2008年より同センター適応知性研究チーム・チームリーダー。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明。主な著書に、『拡張する脳』、『つながる脳』、『ソーシャルブレインズ入門』など



『Oculus Rift』の登場で、にわかに盛り上がりを見せているVR(仮想現実)。この可能性に満ちた世界をたった1000円で体験できるプラットフォーム、それがヘッドマウントディスプレイ(HMD)『ハコスコ』だ。

『ハコスコ』は、段ボールとレンズでできたHMDにスマートフォンを差し込むだけの、いたってシンプルな作り。でありながら、数万円単位の高額で大掛かりな従来のHMDと同程度の、没入感のあるVRが体験できるという。

製造・販売しているのは、今年4月に創業したSR Laboratories。理化学研究所(理研)の適応知性研究チームのリーダーで、「社会脳」研究の第一人者である藤井直敬氏が代表取締役を務める異色の会社だ。

脳科学の研究者である藤井氏がVRの世界に足を踏み入れたのはなぜか。自らHMDの開発に携わり、起業にまで至ったのはなぜか。

そこには、一般的な研究者像とは一線を画する、藤井氏独特の仕事哲学があった。
必要な道具がないなら、作ってしまえ

藤井氏が代表取締役を務めるSR Laboratories

朝の挨拶一つとってみても、相手が会社の上司なのか、親しくしている友人なのかで、そのあり方は変わってくる。「社会脳」の研究とは、他人との関係性に応じて自分のふるまいが変わってしまう、その仕組みを解明することだ。

藤井氏は当初、ヒトと比較してその仕組みが分かりやすい、サルを使って実験を行っていた。

「同じ研究をヒトでもやりたいと考えていました。しかし、ヒトの場合は相手が誰であるかということのほかにも、いろいろな文脈で行動が修飾され、変わってしまう。それでは実験になりません。どうにかして、すべての被験者に同じ体験をしてもらう必要がありました」

だが、もちろん現実は繰り返せない。

「僕がまったく同じように100回『おはよう』と言えるようにトレーニングするか、なんらかの技術を使って再現可能な現実を作るか。

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