7月30日、都内にあるPR会社の国内大手、ベクトルグループでは、役員を含む全社員宛てに社外秘のメールが一斉配信されていた。驚くべきことに、そこには業界内で波紋が広がっているある問題について、自社関与の足跡を一切残さないようにと、注意を呼び掛ける内容がつづられていた。
その問題とは、ずばりインターネット上で長らく横行してきた「ステルスマーケティング」(ステマ)のことだ。
ステマとは、1本20万~60万円ほどのお金を払って作られる広告記事であるにもかかわらず、広告表示をせず、あたかも中立的なニュース記事を偽装するマーケティング手法だ。ステマ記事は景品表示法の不当表示に該当する恐れがありながら、その費用対効果がとても高いとして、暗黙裏に続いてきたものだ。
広告と知らずにだまされる読者を除けば、広告よりも安い料金でニュース露出ができる「広告主」、仲介者として手数料を受け取る「PR会社・広告代理店」、広告費が転がり込む「メディア」と、3者全てがメリットを享受できる。
ところが、いよいよそうしたグレーな蜜月関係が、大々的な問題に発展しつつある。
怒れる盟主ヤフー実は冒頭のメール配信があったのは、月間100億ページビューを誇る国内最大のニュースサイト「YAHOO!ニュース」を運営するヤフーが、こうしたステマ記事によってニュースサイトの信頼性が失墜するとして、法的措置も含めて排除・撲滅を行っていくと公式に発表した日なのだ。
ヤフーは、日々のニュースの提供元として新聞社や雑誌社、オンラインメディアなど計約320媒体(約220社)と契約をしており、その中から毎日約4000本に及ぶニュース記事を掲載している。さらにヤフー社内の編集部が、その日の目玉ニュース約100本をトピックスとしてよりすぐるという仕組みになっている。
ところが、ヤフーのサイトにもステマ記事が潜り込んでいることが一部報道や外部からの指摘で発覚。同社は疑惑が上がっていた「マイナビニュース」「マイナビウーマン」「モデルプレス」の3媒体との契約を解除し、さらに原因究明のため独自の業界内ヒアリングを続けている。
「その元凶として浮上してきたのが、ステマ記事を水面下で仲介している一部のPR会社たちの存在です」(ヤフー関係者)
読者を欺いて、果実を分け合う"毒リンゴ"のようなステマ記事。自浄能力を発揮できなければ、その先には信頼失墜があるだけだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)






0 comments:
コメントを投稿