2016年1月10日日曜日

技術的にはいい線いってる?「AIとの恋愛は可能か」専門家の意見は〈AERA〉

 近年、技術の進歩が著しい人工知能(AI)。技術がさらに進めば、人はAIと恋に落ちることも可能になるのでは……? そんな疑問を専門家にぶつけてみた。

「AI元年」とも呼ばれた2015年。それなら将来は、「人間とAIの恋愛」もできるようになってもいいのではないか。東京大学大学院准教授の松尾豊さん(40)にぶつけると、こう返ってきた。

「部分的には実現していると思うのですが」

 例えば、LINEなどに投入されるAI「りんな」(マイクロソフト)。「彼女」とまでは言えないが、「一緒に晩ご飯食べに行こう」と打てば、「やったー! 行く!」などと、極めて親密な連続対話を体験できる。しかし、「言葉として理解しているわけではありません」と松尾さん。

 なぜなら、AIにとって言語は単なる文字の羅列にしか過ぎないから。入力された記号(言語)に対し、「ふさわしい」と判断した記号をパターン化して返しているだけ。

 それでも人間というものは、親近感を持ってしまう。

「相手の言葉に『なぜ?』と続けて応答するだけでもいい。1960年代に開発されたソフト"イライザ"が古典的な例です」(松尾さん)

 恋人に求めるものは、「会話のノリ」「趣味の合う人」。よく言われることだ。これもクリアは容易かもしれない。

 昨年、米グーグルが発表したリポートによれば、映画の脚本を学習させると、言葉の選び方や語尾が「それっぽく」なる結果も出ている。

 AIと恋愛。そもそも、社会的に必要なのかどうかの議論はともかく、技術的には、かなりいい線のモノができるところまで来ているのかもしれない。

 ところが、恋愛の先には喜びや、場合によっては嫉妬の気持ちまで存在する。AIが人間並みにそこまでたどり着き、表現するまでには、はるか長い道のりが待っている。

 なぜか。松尾さんは、「人間は社会的な動物だから」と言う。

 社会的なつながりのなかで、自己を発見し、また他者に働きかけることで達成感を得る。このことを、長い長い進化のプロセスを経て、人間は獲得したのだ。AIには、まだ早い。

※AERA  2016年1月11日号より抜粋

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