2018年3月10日土曜日

シナリオ執筆から撮影まで、放送業界が抱くAIへの期待と不安

テレビをはじめとする放送業界で人工知能AI)は今どのように活用され、また今後、どのように使われていくのだろうか。近年の活用事例と展望をまとめてみたい。

2017年9月に、放送業界最大のカンファレンス「International Broadcasting Convention2017(以下、IBC)」がオランダで開催された。そのなかで、特に白熱した議論は「テレビ放送産業と人工知能をいかに繋げていくか」というテーマだったという。その理由はふたつある。ひとつは、人工知能の活用が業界の発展に寄与するから。もうひとつは、現在の状況に対する"危機感"からだ。

IT技術はこの数十年の間に、インターネット放送サービス、オンデマンドストリーミングサービスなどを生み出し、放送の在り方自体を変容させてきた。前向きに解釈すれば、放送業界はそもそも、IT技術の革新性と相性がよい分野のひとつだったと言い換えることができる。そのため、IT技術の最先端をいく AIと連動した新たなサービスが生まれることは、とても自然な現象だと考えられている。

一方、専門家たちは、放送業界が抱くAIへの関心の高さは、放送市場の飽和と加熱した競争への不安の裏返しだとも指摘している。

日本では、若年層のテレビ離れが問題視されて久しいが、その背景のひとつには、ネットフリックスのような新しいタイプのインターネット放送サービスの存在がある。徐々に力を失いつつある既存メディアは、ユーザーの離脱を防止し、新たな成長を模索するための手段として、人工知能やコンテンツ利用データをベースにした新たな放送コンテンツの製作に迫られている。

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