2014年8月12日火曜日

ロンドンで見た世界の最新NFC事情――新技術「HCE」と公共交通機関の進展に注目

 以前にMobile World Cogress 2014での取材で見えてきた「NFC」の最新事情についてまとめたが、それまで遅々として進まなかったNFCの普及がここにきて急速に進みつつある印象を受ける。今回、6月にロンドンで開催された「NFCP Global」という会議に参加する機会を得たが、このイベントでの関係者との意見交換ならびに、筆者が過去半年にわたって取材してきたNFCの今を紹介する。

●NFCの歴史は「足の引っ張り合い」の歴史

 スマートフォンやICカードを非接触の読み取り機にかざして決済を行ったり、公共交通機関を利用したりできる「タップ&ペイ」の仕組み。これを実現しているコアがNFC(Near Field Communication)という近距離無線通信技術と、個人の識別情報や電子マネーの課金情報を安全に保持するためのセキュリティチップの存在だ。スマートフォンに搭載されているセキュリティチップは特に「セキュアエレメント(SE)」などと呼ばれている。

 スマートフォンにおけるSEの興味深い点は、スマートフォンを専用リーダーにかざしてNFC通信を行う際、リーダー端末とSEが直接通信を行い、スマートフォンに搭載されたプロセッサは直接通信に関与しないところだ。そのため、仮にスマートフォンのモバイルOSにマルウェアのようなソフトウェアが混入したとしても、SE自身のデータは保護されているため、盗聴やデータの改ざんは難しい。このハードウェアで提供されるSEが、NFCにおける"タップ&ペイ"のポイントだといえる。

 すべてのセキュアな情報やアプリはSEに記録され、これを場面によって適時使い分けることで「1つの端末で複数の用途で用いることができる」ようになる。このように複数のアプリを集中管理できるような仕組みを「モバイルウォレット(Mobile Wallet)」などと呼び、日本では「おサイフケータイ」のような名称でサービスが提供されている。

 ここで問題となるのは「誰がSEを管理するのか?」という点だ。SEを管理するということはすなわち「すべてのNFCを使ったサービスの窓口になる」ことを意味する。スマートフォンへのSEの搭載方式は大きく分けて3つある。1つが、日本でもおサイフケータイの形で提供が行われている、SEを携帯本体に組み込む「eSE(Embedded Secure Element)方式」。

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