ドイツで開催された、欧州最大の国際家電見本市「IFA2014」。大規模な展示会場を構える、韓国・サムスン電子の製品を見て回ったパナソニック幹部が、ポツリとこぼした。
"あれ"と言ったのは「曲面4Kテレビ」。高精細の画面を、緩やかにカーブさせて視認性を高めており、IFAをはじめとした家電見本市で、各社がこぞって投入している製品だ。
かくいうパナソニック自身も、有機ELパネルを使った曲面形のテレビをすでに製作している。
それでも、果たしてどこまで消費者のニーズがあるのか、読み切れない不安が、思わず口を突いて出た格好だった。
メーカーのそうした心情を見透かしているかのように、各社の展示会場で、曲面形テレビを見る人の姿はまばら。
さらに、関心が集中した各社のスマートフォンの新製品でさえも、専門家からは「やや新味に欠ける」との声が多かった。
デジタル家電が目玉不在ともいうべき状況で、パナソニックが欧州市場の攻略に向けて、間隙を縫うように注力し始めたのが、洗濯機や冷蔵庫などの「白物家電」だ。
まず取り掛かったのが、生産拠点の確保。7月にスロベニアの家電メーカー、ゴレーネに12%強出資し、サプライチェーン(供給網)を固めた。来春には、ゴレーネと共同開発した洗濯機を投入するほか、独ボッシュと連携し、製品の相互供給もにらむ。
本間哲朗役員は、欧州での白物家電(テレビを除く)の売上高を、「現状の約450億円から2倍の900億円にする」と意気込むが、実はそこでも、サムスンの牙城が立ちはだかる。
難しい商品の差別化欧州の冷蔵庫市場で、サムスンのシェアは10%強で首位。洗濯機でも上位につける。一方で、パナソニックは白物家電全体でのシェアは、5%に満たない水準だ。
ベルリン市内の家電量販店でも、その様子がうかがえる。
白物家電の売り場に立つと、すぐに目に飛び込んでくるのが、サムスンの洗濯機だ。500ユーロ(約6万円)台の製品が中心で、隣に並ぶパナソニックの製品よりも、100ユーロ前後安い。
パナソニックは、ドイツ国内の電気料金が上昇していることを踏まえて、省エネ性能の高さで付加価値を高め、拡販につなげる方針だ。消費者に向けた意識調査でも、テレビ購入の優先順位として、省エネ性能が最も高かったという結果が出ており、訴求力は高いとみている。
ただ、サムスンの白物製品は、欧州の省エネ基準で最高ランクとなる「A+++」の評価を得ているものも多く、差別化は容易ではない。…
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