2017年8月31日木曜日

初音ミク10周年、“生みの親”語る「命なきものに魂を吹き込む」文化

 「10年て、考えてみると長いですよね。ひとつの流行り廃りがガラリと変わるほどの時間というか」。そう懐かしむように笑い、語り始めたのはバーチャル・シンガー「初音ミク」の開発を手掛けた"生みの親"、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長(52)。

 きょう8月31日、初音ミクは2007年の発売からちょうど10年を迎えた。午前0時の段階ですでに膨大な量の10周年お祝いコメントやイラストがSNSを駆け巡り、その様は圧巻の一言。音楽制作ソフト「VOCALOID(ボカロ)」として世に出た初音ミクの10年はおそらく、そんな無数のネットユーザーが"彼女"に「歌い人」としての人格を授けようと向き合ってきた時間だ。その日々をともに駆け抜けた伊藤氏に、改めて今の心境を語ってもらった。

■ネットに見出されたボカロの"価値"

 まず確認しておきたいのは、初音ミクの登場した07年が、YouTube(05年)、ニコニコ動画(06年)などの出現でネットに大きな地殻変動が生じた直後だということ。そこから音楽との出会い方・広まり方は劇的な変化の奔流に飲まれていく、そんな10年だった。「その時代にぽっと現れたのが初音ミクという存在なのかなと」そう伊藤氏は切り出す。

 初音ミクの登場より前、クリプトン社はボカロ用ソフトとして04年に「MEIKO」06年には「KAITO」(※1)を発売しているが、当初はこれが何にどう使われるべきなのか、未知のテクノロジーゆえ伊藤氏にも予想しきれなかったという。

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