2018年5月24日木曜日

人工知能が絶対にできないこと――AI研究の難問「フレーム問題」を考える

 ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・M・クリステンセン教授が書いた『ジョブ理論』(現訳は『Competing Against Luck』。日本語訳は2017年に刊行)には、私のような"ひよっこデータサイエンティスト"が仕事をする上で忘れてはならない教訓が記されています。

データは、顧客が「なぜ」ある選択をするのかについては、何も教えてくれない

 教授は自身の身長や家族構成などのデモグラフィックを例に挙げ、「今朝、ニューヨーク・タイムズを買うという行動を私に選択させたのは、こうした特徴のせいではない」として、相関関係と因果関係を取り違えてはならないと強く訴えます。

 この話を思い出すたびに、「手元にあるデータが世界の全て」だと思い込んで分析するとロクな結果にならないと、身につまされる思いでいっぱいになります。

 苦労してたどり着いたダンジョンの奥にある宝箱には、絶対に強い武器や防具が入っていると考えるのと同じように、データをこね回しているといつの間にか「これが答えだ!」と錯覚してしまった経験は、誰しも一度ぐらいはあるでしょう。「安易に答えを見つけ過ぎだ」という批判はごもっともなのですが……。

 私たちが暮らしている世界は、Excelで表現できる程度のデータ量では説明できません。ビッグデータといわれるようなデータ量でも無理なはず。それなのに、どうして膨大なデータさえあれば、人工知能が正しく判断してくれると考えてしまうのでしょうか? 今回は人工知能が「できないこと」についてお話しします。

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