2018年6月15日金曜日

アマゾンが張り巡らす"毒蜘蛛の巣"の恐怖

小売業界を独走中のアマゾンだが、同社は伝統的な意味での小売業者ではない。圧倒的なイノベーション力を持つテクノロジー企業が「たまたま物販も手がけている」だけだ。ここを見誤ると本当の強みがわからない。アマゾンのイノベーションの特徴は、「社外のすべての企業にも提供すること」であり、その「毒蜘蛛の巣」は消費者だけでなく、競業他社も捕らえて離さない。彼らに死角はないのか――。
※本稿は、ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■ベゾスの関心はファッションより宇宙
米大手百貨店メーシーズのテリー・ランドグレンCEOは、2016年3月の投資家会議の席上、アパレル市場でアマゾンが多少は脅威となるかもしれないが、ネットで衣料品を売るという現実の厳しさに対応しきれないのではないかと懐疑的な見方を示した。当時発行されたばかりの調査レポートで、2017年までにアマゾンがメーシーズを抜いてアメリカのアパレル販売の首位に立つだろうとの予想についてコメントを求められたランドグレンは、「ネット販売品の返品が来るようになれば、思ったより大変なことだと気づくだろう」と語った。
ランドグレンがこんなコメントを披露していたころ、アマゾンはまったく違う点に注目していた。ジェフ・ベゾスCEOがロボット・人工知能・宇宙探査の各分野の名だたる専門家を集めた会議を招待制で極秘開催していたのだ。

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