2013年10月2日水曜日

釜石市とKDDIが手を組んで取り組む「災害時のWi-Fiのあり方」とは

大規模災害時に、電気や水道、ガスといったライフラインが絶たれることで、住民はおろか、いざという時にサポートする役割の自治体もその機能を失ってしまう。そのライフラインの1つである「通信」について、災害時のWi-Fi運用に関する実証実験が、9月1日に岩手県釜石市で行われた。

今回、実証実験に至った背景にはKDDIから釜石市に出向している同市 総務企画部 広聴広報課の石黒 智誠氏の存在がある。KDDIで東日本大震災に関する復興支援を取りまとめている復興支援室の阿部 博則室長や、実証実験の旗振り役となったコンシューマ事業企画本部 TFオフロード推進室の大内 良久室長、そして石黒氏の3名に今回の取り組みについて話をうかがった。

災害時のWi-Fi運用に関する実証実験の詳細は、該当記事を参照していただきたいが、実証実験が釜石市に決まった理由にはいくつかの理由がある。

1つは、釜石市が東日本大震災を通して得た教訓だ。震災が起きた3分後の2011年3月11日の14時49分に最初の大津波警報(3m)が発令された。15時20分に3mの津波が押し寄せ、この段階で沿岸部の防災無線施設などが破壊され、市内への津波警報周知ができなくなってしまったという。

その後、津波警報は10mとなり、全国民の知る被害に至ったことは2年半経った今でも記憶に残っている人も多いのではないだろうか。この被害により、震災によって釜石市で亡くなった人の数は888名、行方不明者数も152名となっている。

震災以前から釜石市では、高齢化が進む地域だからこそICTの活用が今後重要になると認識しており、市内全域の光ファイバー網導入を目指していた。震災によって、スケジュールは一部ずれ込んだものの、現在では光ファイバー網の構築を完了している。

しかし、有線では寸断リスクがあり、実際に釜石市でも東日本大震災の時には、数km奥地であっても断線が起きていた。市役所が津波によって利用できず、緊急の災害対策本部となったシープラザ釜石でも、電話連絡すらできない状況に陥っていたという。

今回のWi-Fiを利用した実証実験と話を照らし合わせて考えてみると「(Wi-Fiルータの先にある)有線が切れてしまえば、使えなくなるのではないか」という印象を受けるかもしれない。ただ、Wi-Fiを設置するポイントは、各避難所などの大型施設であり、バックボーンとして携帯キャリアが提供する3G/LTEインフラを活用するケースも考えられる。

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