2014年6月4日水曜日

3Dプリンタで銃をつくるなんて、あまりにつまらない発想である

3Dプリンタは、デジタルデータから三次元の物体を樹脂などの素材で出力する装置として、最近になって一般的にも急速に知られるようになった。ここひと月あまりのあいだにも、3Dプリンタに関するニュースが2つほど立て続けに報じられ、話題を呼んでいる。

ひとつは、3Dプリンタで製造したと見られる銃を所持した容疑で逮捕者が出たこと(川崎市、5月8日)。もうひとつは、京都大学病院での肺移植手術に際して、事前に3Dプリンタで肺や血管の精密な模型をつくり、それを用いて検討が行なわれたというニュースだ(5月14日発表)。後者は、夫の右肺の下部を、患者である妻の左肺として移植するという、世界でも初めての手術だった。肺を左右反転しなければいけないことから、CTスキャンのデータをもとに夫の肺の血管や妻の気管支を3Dプリンタで模型として忠実に再現、どうつなげるかなど検討を重ねたという。

スキャンしたデータを拡大・縮小したり、回転あるいは左右反転させたりといった操作は、コンピュータ上であれば容易にできる。3Dプリンタは、その操作をコンピュータ上にとどまらず、物質の世界にまで反映することを可能とした。折しも先月刊行されたばかりの、田中浩也『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』(講談社現代新書)にも、左足が生まれつき前後逆方向になっていたアヒルのため、義足をつくったというアメリカでの事例が紹介されている。シリコン樹脂製の義足は、そのアヒルの妹の足をスキャンしてデータをとり、それを拡大縮小して微調整しながら3Dプリンタで出力したものから、型をとってつくったという。

■3Dプリントを設置して最初に出力するべきものとは?
『SFを実現する』は、3Dプリンタなどを用いた新しいものづくりについて、慶應義塾大学で目下、研究・開発を進めている著者が、その背景にある思想などを説明するとともに、究極的に目指す未来像を示したものだ。読み進めるうちに、3Dプリンタは、どうやらいままでの機械の概念を大きく覆すものらしいということが、だんだんわかってくる。たとえば、著者が大学の研究室に導入した2台目の3Dプリンタの説明書に記されていたという次の一文には、目から鱗が落ちた。

《この3Dプリンタの電源を入れて、何よりも最初に出力してほしいものは、この3Dプリンタ自身の部品です。データはウェブサイトに公開しています。それを出力して大切に保管しておけば、壊れた際にもすぐに部品交換ができるでしょう》

普通の機械であれば、故障すればメーカーへ修理に出して、部品を交換してもらうなりしてもらうところだが、3Dプリンタでは自前でそれが可能だというのだ。

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