2014年8月13日水曜日

書店の発想、小売りの矜持――未来屋書店は電子書籍とこう向き合う

 国内最大級の小売り事業者であるイオングループ。

 同グループで書籍を専門に取り扱う未来屋書店が電子書店「mibon」の運営を開始したのは2013年8月。電子書店としては後発ながら、全国に200以上の実店舗を持つ強みを生かし、店頭で電子書籍の代金決済を可能にするなど、特色あるサービスを展開している。

 およそ30年にわたって書籍の販売を続けてきた同社が、電子書籍事業で目指すものとは何なのか。そこにはどんな小売りの誇りがあり、その視線は誰に向いているのか――mibon事業を統括する未来屋書店デジタル事業部の浅井秀樹部長に聞いた。

●変化を乗り越えてきた未来屋書店の30年

―― mibonの話をお伺いする前に、未来屋書店の歩みをご紹介いただけますか。

浅井 未来屋書店はイオングループの一員で、約30年前の1985年に創業しました。創業当時は「ブックバーン」という社名で、車でお越しいただくことを想定した郊外型店舗、いわゆるロードサイドショップとして事業を運営していました。

 当時のコンセプトは「地域の情報発信基地」で、書籍だけではなくCDやレンタルビデオも取り扱い、さらに店舗内にイートインスペースを設け、ブルーシールアイスクリームを販売していたりしましたね。

 10年ほどその業態で運営していく中、イオンの出店形態がスーパーのジャスコから、ショッピングモールへと大型化していったこともあり、1990年代中ごろから主にイオン内のインショップ書店の形態へと移行し、同時に商材も書籍のみに絞り込んでいきました。

―― 単独で集客しなければならないロードサイドから、総合的な集客がある程度担保されているショッピングセンターへの移行ですね。

浅井 そうですね。新しいところに手を突っ込むよりも、今ある資産や人材も含めて、もっとストイックに本屋になっていこうとするフェーズでした。イオンの出店に合わせて、全国の店舗数を急速に拡大させる中で、店舗内のオペレーションを効率化することで、書店事業自体が軌道に乗り始めた時期でもあります。

●小売業を営む商人としての矜持

―― 2000年代に入ると、国内では「LIBRIe」や「ΣBook」といった電子書籍専用端末も登場し、現在の電子書籍の流れが来る前の電子書籍が登場しました。当時の電子書籍はどのように見ていましたか?

浅井 一言で言うなら「キワモノ」でしたね。利用者からすると、本を読みたいだけなのに、そのために全く関係ない投資、つまり端末を購入しなければなりませんでした。

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