2015年10月3日土曜日

IoT時代の認証技法を考える【連載:増井俊之】



増井俊之の「世界の不便を退治しよう」



増井俊之(@masui


1959年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。ユーザーインターフェースの研究者。東京大学大学院を修了後、富士通半導体事業部に入社。以後、シャープ、米カーネギーメロン大学、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Appleなどで働く。2009年より現職。携帯電話に搭載される日本語予測変換システム『POBox』や、iPhoneの日本語入力システムの開発者として知られる。近著に『スマホに満足してますか? ユーザインターフェースの心理学』



先日ロンドンを訪問したとき、GoogleMapsでホテルの地図を検索したら、「お前はきょうこのホテルに宿泊することになっている」と地図上に表示されたので驚きました。私は検索と地図以外のGoogleサービスを使っていませんし、もちろんGoogle経由でホテルを予約したわけでもないので、なぜ自分の情報がGoogleに把握されているのか、とても不思議に思ったわけです。

私は普段、Gmailを使ってはいないのですが、念のために全てのメールをGmailアカウントに転送しているので、その内容から判定されたのかもしれません。他の理由によるのかもしれませんが、思わぬところで個人情報が漏れているように感じられて、気持ちが悪かったのは確かです。

現状でもこのありさまですから、センサやコンピュータがあらゆるところに存在して、行動がモニタされるIoT時代には、個人情報を完全に守ることは難しいでしょう。

一方、IoT時代には認証手法が現在よりも重要になってくると思われます。現状のWebサービスではパスワードで認証を行うのが普通です。しかし、あらゆる場所で無意識的にさまざまなサービスを利用することが増えてくるIoT時代には、サービスを利用するたびにパスワードを入力するわけにはいきませんから、各所で自動的に適切な認証が行われることを期待しなければなりません。

現在広く利用されているパスワード認証は、強力なパスワードを作って覚えるのが大変な上に、攻撃に弱いという欠点があるため、パスワードに替わる新しい認証手法がたくさん提案されてきていますが、あらゆる面でパスワードよりも優れている認証手法はまだ存在していないようです。

スタンフォード大学でセキュリティの研究をしているJoseph Bonneau氏調査によれば、これまで提案されているどの認証手法にも何らかの欠陥があるということなので、パスワードを完全に置き換えられる手法はすぐには期待できないようです。

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