2014年5月12日月曜日

Webデザインが必要とされなくなる日

Webデザインが必要とされなくなる日
2014年05月12日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

先日とある記事で見かけた、WordPressを保有するベンチャー企業AutomatticのCEOのコメントが気になった。WordPressはオープンソース型CMSとして無償配布していると同時に、SaaSとしてWordPress.com経由でWebサイトをオープンできるような仕組みを提供している。シェア的にはほぼ半々とのことだが、このシェアは数年で大きくバランスを崩して自社サーバ上でWordPressをホストする企業がほとんどになるというのである。

前回のコラムでWeb構築サービスを提供するベンチャー企業の躍進を伝えたが、彼らの多くはWordPress.comと同様に自社のWebサービス上へCMSを置き、広くユーザーに提供している。Automatticとしては、WordPress.comで勝負するのではなく、オープンソースを配布し、プラグイン提供やサポートで利益を出すディストリビューション型ビジネスに特化していくというわけだ。つまりAutomatticは、大企業を中心としたビジネスモデルにフォーカスをあてるということだろう。

ご存じかと思うが、WordPressは2014年時点で多くの主要Webサイトが採用している世界最大規模のCMSだ。もとはブログ構築システムだったが、さまざまなプラグインツールやテンプレートの拡張により、大規模な企業サイトの構築からコンテンツ管理をまかなえるCMSへと成長した。ブログの領域ではMovableTypeの後塵を拝していたものの、企業向けのCMS分野への進出を契機にやがて逆転し、現在では圧倒的な差をつけている。

台頭著しいWixやWeebly、SquareSpaceなどのWeb構築サービス企業は、基本的には中小企業向けのサービスといえる。というより、大企業はどうしても自分たちが直接管理するサーバ環境にWebサイトを置きたいという欲求が強いので、必然的に彼らを避けがちだ。

Automatticは、彼ら新興企業との直接対決を避けると同時に、みずからの陣地を固く守り、侵入を妨げる戦略をとろうというのだろう。そのために、Automatticは1.6億ドルもの巨額の資金調達で兵站の充実を図っている。

もともとWordPress.comにしてもそのほかのSaaS型Webサイト構築サービスも、一般企業やユーザーがサーバを購入したり、データセンターの契約を行なう手間やコストをなくすことで、Web制作会社やホスティングサービス企業を無力化しようというビジネスモデルだ。

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