2014年8月19日火曜日

動くイノベーションを捉える

 製造業では米国アップル社のiPhoneでの大成功以降、「こんな製品を市場に出したい」というコンセプト主導型のイノベーションが常に注目される。一部では、何故日本メーカーにはiPhoneが作れなかったのか、これから日本メーカーはどうすればiPhoneを作れるようになるのか、といった議論が行われ、かつてのようなデジタル家電での高いプレゼンスを取り戻すには、コンセプト主導型のイノベーションを起こす必要がある、といった論調の書籍や記事も散見される。

 しかし、イノベーションの主体は最終製品だけではなく、最終製品の販売までのバリューチェーンの各工程で起こり得るものであることを忘れてはならない。原材料の素材開発、部品の開発、生産技術に至る全てのバリューチェーン上の工程でイノベーションは発生する可能性があり、常にどこかでイノベーションが起きている。イノベーションは常に動いている。

 動くイノベーションを考える上でもっとも重要なのは、イノベーションがどこにあるのかを見極め、そのイノベーションどうやって捉えるかである。日系メーカーがそれぞれの分野で勝ち組として生き残るためには、常にどこかで発生しているイノベーションを自社の価値として取り組んでいく必要がある。

●2、動くイノベーションを見極める

 イノベーションは、最終製品のライフサイクルが、導入期、成長期、成熟期、衰退期と移り変わる中で動いていきながら形を変えていく。また、イノベーションは前世代、現世代、次世代の製品ライフサイクルが交わる中で動いていくことに注意したい。(図A:参照)

 最終製品の導入期では、素材・部品そして生産技術が主体となりイノベーションが発生する。これは、前世代の製品で使われていた素材や部品の高性能化や小型化がイノベーションのキッカケとなることが多い。例えば、iPhoneが登場した背景には、日系メーカーが強かったガラケーで培った様々な高性能部品を流用したことがあるが、これらの高性能部品が更にイノベーションしていくことでスマホに適した素材や部品へと発展した。直近では、スマホでの活用で技術進化した様々な部品(バッテリー、処理演算機、メモリー等) の小型化や高性能化が引き金となり、次世代の最終商品としてウェアブルコンピューティングの登場が期待されている(Google 社のメガネ型コンピューターなどが一例だが、製品としてコンセプトが固まり、普及するにはまだまだ部品そのものの技術レベルの向上が必要)。

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